「ワインと言えばブドウから作るものではないのか?」といった声をよく聞きます。語源からもワインはブドウのお酒と考えられています。しかし、実際は果実酒といった意味合いで使われている事が多くみられます。“ワインという言葉” が “果実から造られたお酒を示している” と理解して頂くための “最適な言葉” として便宜上使っています。
私たちが本当に造りたいのはワインではなく、パイナップルのお酒(醸造酒)です。
お酒は大きく2つに分類されます。ひとつは醸造酒、もうひとつは蒸留酒です。酵母が糖分からアルコールを生成し、アルコール発酵により出来るお酒を醸造酒とよびます。日本酒やビール、ワインがこれに該当します。そして、醸造したお酒を加熱してアルコール分を取り出して造るお酒を蒸留酒(焼酎、ウイスキー、テキーラなど)といいます。
醸造酒の原料となる米やブドウの収穫時期は秋になります。お酒が発酵する時期には、外気が冷え込んでおり、自然の中で冷やされてお酒になってきたと思います。私たちが造っているパイナップルのお酒の原料は当然パイナップルです。パイナップルは熱帯や亜熱帯といった暖かい気候でしか育たない果実です。こうした外気温の高い環境の中では、おいしい醸造酒が出来ません。発酵がはじまると糖分からアルコールが出来る過程で熱が発生し、液体の温度がどんどん上昇していきます。温度が上がるとそれに適した酵母がさらに活性化してアルコール発酵が急速に進んでしまいます。
こうした理由から熱帯の果物を原料とした醸造酒は、おいしいお酒にはならなかったのではないでしょうか。そのためパイナップルのお酒は、歴史上に残ってこなかったと考えています。
しかし、文明が発達して冷却技術が誕生し、発酵温度の制御が可能となり、これまでは出来なかったパイナップルのお酒を造ることが可能になりました。真夏でも人間がエアコンの効いた室内で快適に過ごすように、酵母もまた快適な温度の中でアルコール発酵を行うことが出来るというわけです。
私たちはパイナップルのお酒を新しい時代の醸造酒と考えています。ブドウのワインのように難しく考えるのではなく、これまでにない南国のお酒として、自由に楽しく飲んで頂きたいと考えています。